お見送り理由が本人に届くまでに、何回「翻訳」されているか

面接

「ご経験やスキルを勘案してお見送りとなりました」。この言葉を受け取って、そこから不合格の理由を読み解こうとしたことがある人は、少なくないと思う。何度読み返しても、次に何を直せばいいのか分からない。何かを直したくても、直す対象すら分からないのだと思う。ご縁がなかった、総合的な判断で、という言い回しも同じで、丸く、当たり障りのない一文として届くだけで、手がかりらしい手がかりは残らない。同じ言葉を何度も受け取っている人ほど、次の応募でも同じところでつまずいている気がしてならない。だが実際に評価シートに残っていた理由は、そこまで曖昧なものではなかった。

大企業で中途採用に関わっていた頃、選考を通過させないと判断した理由は、具体的に書き残していた。再現性に疑問がある。成果の水準が、期待していたものに届いていない。論理的思考力に懸念がある。曖昧に書いてしまうと、あとから自分の判断の根拠を追えなくなる。だから具体的に残すことは、候補者のためだけでなく、自分の判断を検証可能な状態に保つためでもあった。書きながら、この人は今後どこかで評価される機会があるかもしれない、とも思っていた。だからこそ理由は曖昧にせず、できるだけ具体的に残すようにしていた。ただ、それがそのまま本人に届くことは、一度もなかったように思う。

外に出るまでに、少なくとも一段階、言葉は変わる。自分がエージェントに理由を伝える時点で、すでに丸めていた。評価シートに書いた通りの言葉をそのまま渡せば、候補者を必要以上に傷つけることになりかねない。今後、別の形でその候補者と関わる可能性もゼロではない。だから渡す時点で、「経験やスキルを勘案して」に近い表現に、すでに近づいていたのだと思う。ここで、本音は消え始める。

さらにその先で、もう一段階、言葉は柔らかくなる。エージェントは、企業から受け取った理由をそのまま候補者に伝えるわけではない。次の選考への意欲を保ってもらうために、より当たり障りのない表現に置き換える。これは手抜きでも不誠実さでもないと、今なら分かる。誰も嘘をついていない。ただ、それぞれが相手を思ってやっていることの結果として、本音が少しずつ薄まっていく。だから、届いた理由に不誠実さを感じて憤る必要はないと思う。怒りの矛先を企業やエージェントに向けても、次の選考には何もつながらない。憤る先を間違えると、本当に見るべきものを見失う。

転職する側に回っていた時期、自分も同じような言葉を受け取ったことがある。当時は、自分の何が悪かったのかを何度も考え直していた。特に、似た理由を何度も受け取っていた時期は、自分のどこか根本的な部分を否定されているような感覚さえあった。その言葉をそのまま受け止め、経験が足りなかったのだろうと考えて、なんとなく次の対策を立てていた。今、書く側にいた時の記憶と重ねると、あの時受け取っていた言葉も、きっとどこかで一段階、あるいは二段階、丸められていたのだろうと思う。原因を探ろうとした労力の一部は、実際には存在しない解像度を求めていたのかもしれない。

本音がどこまで薄まらずに外へ出るかは、企業とエージェントの関係の深さでも変わってくる。懇意にしている相手には電話で詳しく伝えることもあれば、付き合いの浅い相手にはメール一本で済ませることもあった。ただそれは合否の結果とは関係がなく、あくまで届く理由の解像度の話でしかない。

企業が渡す理由は、すでに丸まっている。エージェントは、それをさらに柔らかく伝える。誰も嘘をついていない。ただその分だけ、本当の理由は少しずつ消えていく。

この構造を知らないまま、届いた理由を額面通り受け取って自己分析を重ねるのは、見当違いの答え合わせをしているのに近いかもしれない。「経験不足」という言葉を真に受けて、無駄に経験を積み増そうとする人もいるだろう。だがその言葉の裏に何があったのか、届いた時点ではもう正確には分からない。何度も似たような理由を受け取り続けている人ほど、この構造を疑ってみる価値があると思う。

だとすれば見るべきは、届いた言葉の中身を深読みすることではなく、そもそも何が評価されていたのかという、評価される側の構造そのものではないかと思う。何を評価軸として見られていたのかを言語化できれば、次に見せるべきものも変わってくるはずだ。理由の一語一句を追いかけるより、そちらの方が、次の選考でよほど役に立つと思う。

まとめ

お見送り理由は、本人に届くまでに、少なくとも一段階、多くの場合はもう一段階、言葉を変えている。企業もエージェントも、悪意があってそうしているわけではない。

かつて自分が受け取る側にいた時も、同じ構造の中にいたのだと思う。

届いた言葉をそのまま信じて振り返るより、何が評価されていたのかという構造に目を向ける方が、次につながるのではないかと思う。

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